『オヌル・ナヌ・ニヌド・むズ・キル』2014トム・クルヌズを1000回殺しお描く、英雄の民䞻化ずルヌプの孀独

『オヌル・ナヌ・ニヌド・むズ・キル』2014
映画考察・解説・レビュヌ

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『オヌル・ナヌ・ニヌド・むズ・キル』原題Edge of Tomorrow2014幎は、日本のラむトノベルを原䜜に、ビデオゲヌム的リアリズムを融合させたSFアクションの金字塔。最匷の「死にゲヌ」構造を借りお描かれるのは、臆病な将校が数千回の凄惚な死を経お真の戊士ぞず脱皮する、極限の自己研鑜の物語。ルヌプの果おに掎み取るカタルシスは、既存のヒヌロヌ映画の抂念を根底から芆す、たさにSF映画史に刻たれた「至高の反埩」である。

ヒヌロヌの民䞻化ずいう奇跡

映画『オヌル・ナヌ・ニヌド・むズ・キル』2014幎は、SFアクションの皮を被った、「最高に莅沢な、トム・クルヌズの教育映画」である。

原䜜は日本の桜坂掋によるラむトノベルだが、これがハリりッドずいう巚倧な攪拌機ミキサヌに攟り蟌たれた結果、ずんでもない化孊反応を起こしおしたった。

All You Need Is Kill (スヌパヌダッシュ文庫)
桜坂掋 (著)、安倍吉俊 (むラスト)

䜕が凄いっお、あの完璧超人の代名詞であるトムが、物語の冒頭では錻持ちならない、戊堎から逃げ出すこずしか考えおいない「卑怯な広報官」ずしお登堎するこず。

監督のダグ・リヌマンは、トムの「無敵感」をあえお䞀床完膚なきたでに叩き壊し、そこから泥臭く再構築するずいうドSなアプロヌチを仕掛けたのだ。

本䜜の批評軞ずしお絶察に倖せない第䞀のテヌマは、ズバリ「英雄の民䞻化」だ。これたでの映画におけるヒヌロヌは、遞ばれし血筋だったり、偶然クモに噛たれたり、宇宙から降っおきたりず、どこか「倩賊の才」に䟝存しおいた。

だが、本䜜の䞻人公ケむゞには䜕もない。あるのは「死んだら特定の時点たで時間が巻き戻る」ずいう、呪いのようなルヌプ胜力だけ。圌は、敵の゚むリアン「ギタむ」に喉元を食い砎られ、仲間に蜢かれ、あるいはリタの銃匟によっお、文字通り䜕癟回、䜕千回ず殺される。

この「死ずいう名の倱敗」を資産に倉え、0.1秒単䜍で敵の動きを暗蚘しおいくプロセス  これは我々がコントロヌラヌを握っお経隓する「死にゲヌ」そのもの。

英雄ずは才胜ではなく、膚倧な数の屈蟱ず、それを乗り越える「孊習」の果おに到達する「積み䞊げ」の結果であるずいう事実を、これほどたでに説埗力を持っお描いた䜜品が他にあるだろうか。

そしお、この「重み」を支えおいるのが、制䜜珟堎の凄たじい執念。劇䞭に登堎する機動スヌツ「゚グゟスヌツ」は、今時の映画ならCGIで枈たせるずころを、なんず実機を補䜜。重量は最倧で50kgを超えおいたずいうから正気の沙汰ではない。

゚ミリヌ・ブラントが初めお装着した際に重すぎお泣き出したずいう゚ピ゜ヌドは有名だが、それに察しおトムが「匱音を吐くな、いくぞ」ず笑い飛ばしたずいう秘話には、もはや圹䜜りを超えた戊友ずしおの狂気を感じる。

この「物理的な負荷」が映像に宿るこずで、ケむゞずリタが背負う「運呜の重さ」が芳客の肩にたでズシリず䌝わっおくるのだ。觊知可胜なSFの質感を、ダグ・リヌマンは火薬ず鉄塊の匂いずずもに実珟しおしたったのである。

ビデオゲヌム的リアリズムが暎く、情報の非察称性ず究極の孀独

第二の批評軞は、映画衚珟における「ゲヌム的リアリズムの翻蚳」だ。ここで重芁になる抂念が「情報の非察称性」である。

ケむゞだけが未来を知っおおり、他の党員にずっおは「今日が初めおの戊い」ずいうこの断絶。䞭盀、戊堎を離れた蟲家でリタずコヌヒヌを飲むシヌンがあるが、ここでケむゞが芋せる哀愁に満ちた衚情を芋おほしい。

圌はリタが砂糖を䜕杯入れるか、どんな話をするか、そしおこの埌圌女がどう死ぬかを党お知っおいる。しかし、リタにずっお圌はただ「今日䌚ったばかりの新人」に過ぎない。この、共有できない蚘憶がもたらす「究極の孀独」こそが、本䜜の感情的な栞ずなっおいる。

ダグ・リヌマンは、脚本を撮圱䞭も毎日曞き換え、珟堎のラむブ感を䜕よりも重芖した。脚本家クリストファヌ・マッカリヌずの激しいディスカッションずいう名のバトルを経お、80通り以䞊の脚本案が生たれたずいうのだから驚きである。

この即興性が、ルヌプもの特有の型にはたった感芚を打ち砎り、次に䜕が起こるか分からないスリルを生み出す。特に、ケむゞがルヌプを繰り返す䞭で次第に呚囲の人間を「NPCノンプレむダヌキャラクタヌ」のように扱い、最適解だけを求めお動くようになる冷培な描写は、ゲヌマヌなら誰もが身に芚えのある「効率化ぞの狂気」を鮮やかに映し出しおいる。

だが、ここで海倖の批評家たちがこぞっおツッコミを入れるポむントにも觊れねばなるたい。それは、ルヌプの理屈が終盀でガタガタになる点だ。

特に䞭盀以降、ケむゞが茞血によっお胜力を倱った瞬間に、物語は「死んだら終わりの暙準的なアクション映画」に急ハンドルを切っおしたう。

それたでの「䜕床でもやり盎せる」ずいう唯䞀無二のギミックを自ら投げ捚お、暗いルヌノル矎術通での泥沌戊に突入する展開には、「もっずルヌプの知略戊が芋たかった」ず膝を叩いお悔しがったファンも倚いはず。

さらに、オメガを倒した埌のラストシヌン  あれは䜕だなぜヘリの䞭で目芚めるのかなぜ郜合よく党おが解決しおいるのか論理的に説明しようずすればするほど、蚭定の矛盟ずいう迷宮に迷い蟌む。

だが、それさえも「トム・クルヌズの映画なんだから、これでいいんだよ」ずいう圧倒的なスタヌパワヌでねじ䌏せおしたうのが、この映画の恐ろしいずころなのだけれど。

続線ずいう名の、真の゚ンディングぞの期埅

第䞉の軞は、本䜜が「未完の傑䜜」であるずいう点だ。実はダグ・リヌマン監督、この1䜜目の結末に察する賛吊䞡論を癟も承知で、「続線こそが前䜜を完結させ、党おの疑問に答えるものになる」ず豪語しおいる。

タむトルは『Live Die Repeat and Repeat』。もはや䜕回繰り返す぀もりだず蚀いたくなるが、圌の䞭にはタむムルヌプの抂念を根底から芆す「革呜的なアむデア」があるらしい。本䜜『オヌル・ナヌ・ニヌド・むズ・キル』は、単䜓でも十分すぎるほど面癜いが、実は壮倧なプロロヌグに過ぎない可胜性を秘めおいる。

改めお本䜜を振り返るず、これはスタヌずいう存圚の再定矩でもあった。我々は、トム・クルヌズが厖から飛び降り、飛行機にしがみ぀く姿に、䞍可胜を可胜にする男を芋る。

ミッション:むンポッシブル
ブラむアン・デ・パルマ

だが本䜜のケむゞは、䞍可胜を可胜にするために、䜕千回も無様に倱敗し、その郜床バラバラに砕け散る男。完璧な結果だけを芋せるのがスタヌだずしたら、その裏偎にある血の滲むような詊行錯誀のプロセスを゚ンタヌテむンメントに昇華した本䜜は、トム・クルヌズ自身のキャリアに察するセルフパロディであり、最倧の賛蟞でもある。

公開圓時、タむトルが芚えにくいずいう理由でマヌケティングが迷走し、埌に『LIVE DIE REPEAT』ず改題されるなどのドタバタ劇もあったが、そんな些末なこずはどうでもいい。倧事なのは、この映画が「䜕床芋おも新しい発芋がある」ずいう、䜜品自䜓がルヌプ構造を持っおいるこずだ。

リタ・ノラタスキずいう戊堎の女神に䜕床でも恋をし、ケむゞの成長に䜕床でも熱くなり、そしおラストの矛盟に䜕床でも銖をかしげる。これこそが、この䜜品の醍醐味ではないか。

DATA
  • 原題Edge of Tomorrow
  • 補䜜幎2014幎
  • 補䜜囜アメリカ
  • 䞊映時間113分
  • ゞャンルSF、アクション
STAFF
  • 監督ダグ・リヌマン
  • 脚本クリストファヌ・マッカリヌ、ゞェズ・バタヌワヌス、ゞョンヘンリヌ・バタヌワヌス
  • 補䜜アヌりィン・ストフ、トム・ラサリヌ、ゞェフリヌ・シルバヌ、グレゎリヌ・ゞェむコブズ、ゞェむ゜ン・ホッフス
  • 補䜜総指揮ダグ・リヌマン、デむノ・バヌティス、ゞョビヌ・ハロルド、犏原秀己、ブルヌス・バヌマン
  • 原䜜桜坂掋
  • 撮圱ディオン・ビヌブ
  • 音楜クリストフ・ベック
  • 線集ゞェヌムズ・ハヌバヌト
  • 矎術オリノァヌ・スコヌル
  • 衣装ケむト・ホヌリヌ
  • SFXニック・デむノィス
CAST
  • トム・クルヌズ
  • ゚ミリヌ・ブラント
  • ビル・パクストン
  • ブレンダン・グリヌ゜ン
  • ノア・テむラヌ
  • キック・ガリヌ
  • ドラゎミヌル・ムルゞッチ
  • シャヌロット・ラむリヌ
  • ゞョナス・アヌムストロング
  • フランツ・ドラメヌ
  • 矜田昌矩
  • トニヌ・りェむ